第10話「決定的な出来事」

夫婦関係が最悪の状態でした。私は仕事から家に帰りたくなかった。玄関のドアを開けようとすると死にたくなるぐらいでした。

会社で少しずつですが仲の良い人も出来て楽しくなってきたので、会社にいる方がまだ良くなっていました。夫はいつも不機嫌で、空にはなるべく休まず部活に行って、家には遅く帰る様にと言ってあったので、大好きな空とはあまり会えない。

本当につまらなく、また辛い日々でした。私は休日が楽しみでした。夫が仕事に行っていていない日です。一日ゆっくりと買い物に行ったり、大好きなマンガを見たりして、一人こっそりコンビニスイーツを買って食べたりするのが、ささやかな楽しみでした。

ある日の事でした。たまたま三人の休みが一緒になって、私は台所にいました。空もリビングのソファーでくつろいでいました。最近夫はちょくちょく空をかまうのですが、もう高校三年生の男の子が父親に抱きつかれるようなスキンシップを喜んだりしません。

小さい頃にあまりそういう事をしてこなかったので、

「今頃になって何でだ!!」

というのが私と空の思いでした。私はまた始まったのかと、台所から様子を気にしながらも作業をしていたのですが、空がいつもの様に嫌がって抵抗していたのですが急に騒がしくなって、夫が大声を出してきたので何かあったかと思い見に行きました。

夫が空に馬乗りになって殴りかかっているではありませんか。これはいけない大変だと私は夫を蹴りました。空から急いで引き離さないといけないと必死の思いでした。

夫は

「何でお前はオレの味方をせえへんのや。」

と言って、ものすごく怒って階段のカベを殴って2階へ上がって行きました。私は空にかけよりました。

「大丈夫か? 何とも無いか?」

空は何でこんな事になったのかを私に話してくれました。そして恐かったと言いながらもとても怒っていました。すぐにでも出て行きたかったのですが、やはり気がかりなのは自分の足の事でした。

いつ足がだめになるか分からないし、急に入院とかなったら、空と二人ではやっていけないだろう。せめて空が卒業して働き始めるまではという思いがあったので、急に出ていくという事は考えられなかった。それからしばらくは、空と夫をなるべく会わさない様にしていました。