空にも言い聞かせていましたが、私が家に帰って大事な空が殺されていたらどうしよう、もう生きてはいけないなどと考え、もしもみ合いになって空が夫を殺してしまったら、何も考えずに空を守るしかないだろうと考えました。もう仕事どころでは無い様な日々を何日か過ごしていました。
空は休日は家に帰って母ちゃんにも会いたいやんか、でも父ちゃんが家におったら絶対にもう帰りたくなんか無い、安心して帰れる家を作ってよと言いました。私はようやく、空の本当の気持ちを知って決心しました。
「空、家を出よう」
そうと決まれば色々と準備しやなあかんなあ。ここから私と空は夫に気付かれない様に準備に取りかかりました。
住む家を探す。荷物を整理する。とにかく全部を持って行く事はできませんから、空の本やコレクションを売りに行き、多少のお金にして、もうすぐ卒業だからそれなりの部屋にしないとと夫には言いながら空の部屋を片付けました。
私は夫に知られるといけないので何もしなかった。アパートが決まり、妹に協力してもらい、段取りが整うと、いよいよ作戦開始。夫が仕事に出て行ったのを確認し、夫が仕事から帰ってくるまでに引っ越しを完了させなくてはならないので時間との戦いでした。
ゆっくりご飯を食べている時間などありません。コンビニでおにぎりを買って食べながら車で移動、ドキドキハラハラの引っ越し大作戦でしたが、夫が仕事から帰ってくる前に何とか無事に終える事が出来ました。
ここからすべてが始まりました。
電化製品を持って行くと夫が返せと言ってくるといけないので、なるべく持たずに家を出ると決めていました。空とも相談して、決して何も言われない様にしようと、わざと置いてきました。
夫は離婚したいと相談しても決して話しを聞く様な人間では無かった。夫の事をよく知る親戚の人に間に入ってもらって一緒に話し合ってもらおうかとも考えましたが、殺されるかもと空が怖がりました。警察にも相談に行き、黙って家を出る事にしたのです。
引っ越しの日には家の週りを警察の人が見守ってくれるという事で、私達は無事に引っ越す事ができました。夫は仕事から帰るとすぐに電話をしてきましたが、私は出ませんでした。
しばらくは電話には無視しましたが、何も話し合わずに家を出て来たので、しばらくして落ち着いた頃夫からの電話に出ました。