主役、脇役、衣装や照明、音楽などの担当が、劇で伝えたいことに集中し、それを発揮する。つまり、一人ひとりが一つの作品を作り上げる重要なポジションだと思うことができたのです。

衣装係の私は、劇全体のクオリティを上げるため、役者の立場や役目を観客にリアルに伝えようと考えました。家から昔の着物を持ってきてとお願いしたり、年老いた役には髪の生え際などを白くしたりして工夫を凝らしました。配役一人ひとりの年齢や住んでいた家にふさわしい衣装を考えることが、とても楽しくなっていたのです。

このことをキッカケに、私は観る側に立って物事を考えるようになっていました。主役にさせてはもらえなかったけれど、主役であっても脇役であっても、雑用係であっても、一番大事なことは観客に伝えること。「衣装係を担当できるのは私しかいない」そう思った瞬間でした。