一般社団法人『Tradition JAPAN』代表で、着物活性プロデューサーである矢作千鶴子氏の書籍『きょうは着物にウエスタンブーツ履いて』より一部を抜粋し、日本の重要な財産である「着物」について考察していきます。
この場で自分の何が求められているか心得る
小学6年生の時の文化祭で学芸会が行われることになり、大掛かりな劇をすることになりました。担任の先生から配役の発表がある日、私は『主役』になりたいと思っていました。
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当日、主役男子の名前が呼ばれました。続いて、主役女子の名前が呼ばれました。私の名前は残念なことに、そこにはありませんでした。
そして幾つかの配役の名前が発表され、その中にも私の名前が呼ばれることはありませんでした。まさかの裏方なのか……。
配役の次に『衣装の担当』の名前が告げられました。私の名前でした。小学生最後の舞台に立てないことにショックを受けました。
主役になることはイコール名誉。主役になれば両親を喜ばせることができると思っていました。先生が私を主役に選ばなかったことが、悔しくてたまりませんでした。
学芸会当日までの期間、放課後の練習が進むにつれて、劇の内容を伝えるということが何よりも大切なのだと思うようになってきました。配役一人ひとりの役割を明らかに伝えるのが私のポジション。それこそ重要な役割だと思うようになったのです。