彼に種類の多さやサイズについて聞くと、サイズも幅広く用意しているから、丈の長いものはワンピースで着てもいいのではと提案した。
「何故シャツの専門店なのですか?」
私はお店に伺ったときに聞く、お約束の質問をした。
「シャツを着ると、なんだか、正しく生きられる気がするんです。あの、ボタンを一つずつ留める感じや、アイロンをかけないとだらしなく見えてしまう正確さが私にはない気がして、シャツは、それを補ってくれる。多分服は、少し窮屈なくらいがちょうどいいんだと思います」
私はそこで、初めて彼をしっかりと見た。お店に入ってから、カメラに合わせて、また私に合わせてカメラマンがカメラを動かしながら店内をリポートし、もちろんその店主に挨拶をしながら話を進めていたのだけれど、シャツの並びが美しいのと、彼の着こなしに気を取られて、彼を、彼自身をよく見ていなかったことに気がついた。大抵の人が答えるものとは、違う答えが返ってきた。
「それでは、あなたの正しく生きるとは、どういう意味ですか?」
私はまるで宗教家に聞くみたいな質問になったと思った。