第二部 教団~4
香奈と偶然に再会したこと。もしかしたら、これが運命の始まりだったのかもしれない。不思議なことばかり起こるようになったのはその頃からである。
二年前のクリスマスのことだった。クリスマスには、風間は格別な思い入れがある。父方の祖父母がクリスチャンだった関係で、子供の頃、クリスマスは祖父母の家で祝った。
夕食の前にキャンドルが灯され、電気は消される。しんとした闇はその向こうにまた闇の世界を持ち、さらにその向こうに闇の世界が続いている。子供心に風間は隠されたその世界を覗こうとする。すると闇の中からクリスマスツリーがほのかに浮かび上がるのだ。祖母の声が闇の中を響き渡る。
「神様、今年も一年家族を無事にお守りくださいまして有難うございます。アーメン」
風間は今は亡き祖母が大好きだった。包み込んでくるような優しさがある。だが、この日ばかりは祖母の口調は厳粛だ。風間は祖先の歴史を感じる。
「あめにはさかえ みかみにあれや
つちにはやすき ひとにあれやと
みつかいたちの たたふるうたを
………………………………………」
賛美歌をみなで唱和すると、ご馳走になる。これが、風間の幸福な日々の思い出である。
「クリスマスのパーティーを内輪でやるから、君もこいよ。香奈も来るぜ」