第二部 教団 第二章 報告 七
華水教では、頻繁に「市民のための宗教学セミナー」とか、「人生をよりよく生きるための修行」という勉強会を開くのだそうだ。
そこまでは、華水教の華の字も出さない。そのほかにもいろいろな勉強会やらセミナーやらがあって、信者たちは「華水教に興味がありませんか」、ではなくて、「人間の心理についての講習会があるから行ってみませんか」というような調子で勧誘するのだそうだ。ところが、その勉強会は意外なパワーがあって、それに惹かれて華水教に入信してしまう人も多いらしい。
風間は笑い出した。
「そうか、それで、ためしに僕をその勉強会に『派遣』したわけだね」
「うん、実はそういうわけなんだ。すまなかったな」
村上はぬるくなったお茶を一口すするとまた話し始めた。
大新聞というものは、いわゆる「よい子」だから、新聞を情報源とする一般のサラリーマンは気にも留めないのだろうが、実は政治家と宗教団体には裏で密接なつながりがある。
第一に、選挙の票だ。宗教団体をバックにして当選を重ねる先生はいくらでもいる。というより、地元の多くの人が関係している宗教団体があったら、ひとまずはそこの支持を取り付けないと、集票に大きく響くのだ。
第二に、金だ。宗教法人というものは税制上優遇されているが、それも政治のバックがあるためだ。この点はすべて、宗教というものは政治の庇護を必要としているのだともいえる。また、代議士先生のお墨付きがあると、胡散臭そうな宗教にも信用が出来る。だから、宗教は政治家に接近する。一方、信者からの献金で宗教法人には莫大な金が集められるから、政治家のほうでも献金を期待しているわけだ。
まあ、よくない言葉で言えば、癒着といえるのだろうね。
しかし、まあ、政治家と宗教というものはこうして持ちつ持たれつの関係を保っていることが多い。