第二部 教団 第二章 報告 七
「うーん、分からないなあ」と風間は言った。
【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない
「僕はそういうことは知らないからねえ。……まあ、数百万円程度かな」
「そう思うだろう」
村上はにやりとした。
「これは僕の予想に過ぎないが、片山派の代議士一人当たり平均一億という単位だ」
「すべてあわせると二百億円かい?」
風間はぞっとした。
「信じられないな」
「その可能性もあるという程度だよ。しかし、もしもそうだとしたら、何のためにそのような巨額の献金をするのだ? いくらなんでも見返りを全く期待していないわけはないだろう。それもとんでもないことをもくろんでいるのかもしれない。
もしも、華水教が今度何か言ってきた時に言うことを聞かないと、大変なことが起きるかもしれないのだ。そんなことはありえないとは思うが、すべてリークされたら、片山派の代議士一人残らず巻き込んだ大疑獄事件に発展する」
「でも、政治献金というのは合法なんだろう?」
「浄財はいいさ。それも、政党の支部を通して、不正経理をしていなければね。だが……」
村上は少し黙った。
「残念ながら、ほとんどの場合、たたけば埃の出る体なのだ。この途方もない金額が世の中に知れ渡れば、それだけでマスコミが騒ぎ出すだろう。
何を見返りに期待したのかという話になって、もっともらしい説があることないこと流れるだろう。マスコミが騒ぎ出せば、そのうちに何か嗅ぎつけて検察が乗り出してくる。もう、そうなったら流れを止める力は誰にもないよ」
そういって村上は話をつづけた。実は、佐藤大全という名前を君に突きつけられたとき、飛行機の上から突き落とされたような気がしたよ。
佐藤大全先生は一世を風靡した学者だ。表には出てこないが、君も名前ぐらいは知っているだろう。政治家には、学会にブレーンがいることが多い。