1.科学の非平和的使用
科学の非平和的使用の最たるものには、人間殺戮器である(1)核兵器と(2)通常兵器があります。
(1)核兵器
①核兵器の歴史
核兵器は最初にアメリカが開発製造し、第二次世界大戦の末期に日本の広島と長崎に使用しました。人類は、その歴史の中で、戦うためにより強力な兵器の開発に勤しんで来ました。特に、第一次世界大戦から第二次世界大戦中は敵国を制圧するために圧倒的な兵器の要求が高じましたが、発達した科学がその要求に応えられることを悪用し、遂に最終兵器とも言われる核兵器を手にするに至っております。広島と長崎に使用された原爆の威力はTNT火薬に換算すれば16キロトンほどのものでしたが、以後核兵器は核分裂による原爆から核融合による水爆へと進みその威力は急激に膨張し、広島・長崎型の何十倍、何百倍もの威力を持つものが開発されています。
第二次世界大戦後の世界は、アメリカとソビエト連邦(現在のロシア連邦)の二つの大国による世界の二局化が進み、世界は、大きくは、アメリカ側(西側)とソ連側(東側)に分かれて緊張が高まり冷戦時代に突入して行きました。アメリカに核兵器の威力を投影されたソ連は、アメリカに対抗するために、速やかに大量の核兵器を具備するに至っております。大戦後の四半世紀を越える期間、アメリカとソ連はあたかも核兵器開発合戦の様相を呈していました。ここに至り、核兵器を使用しての戦争となれば、人類の滅亡ということになり戦争の勝者も敗者もなくなりますから、どちらも核兵器は持てども使用できない事態となり、お互いが核に拠って相手の核を抑止するという恐怖のバランスが形成されております。アメリカとソ連が前面に出て直接戦うという世界大戦のような大きな戦争はなくこの意味では平和と言えば平和ですが、心から納得できる積極的平和には程遠い、仕方もない消極的平和が危うく保たれているという構図です。
アメリカとソ連に続き、第二次世界大戦の戦勝国であるイギリス、フランス、中国が核保有国になり、そして大戦後に二千年近くもの時を経て再建国が実現したイスラエルに加え、領土問題や宗教の違いが絡み長い緊張状態にあるインドとパキスタンの両国も核を持つに至っております。さらに、近年には北朝鮮も保有国になりました。