エリザベスが親展状の内容を手短に説明すると、コジモは一度大きく溜め息をつき、いかがすべきかしばらく思案していた。かなり迷っていたようだったが、遺言状ではしようがないかと呟き、ついに決心して長い話を語り始めた。

「エリザベスさん。再度確認させていただきますが、本当に話しても良いのでしょうな?  しかし、これはもはや刑事上も時効になっておりますぞ、念のため。今ごろこんなことを明らかにされても、実際、私も大いに困るのですよ」
「それは私の方も同様です。外に知られれば大問題になる事件です。会社にとっても私個人にとっても決して良い話ではありませんから。これが事実とすれば大きいスキャンダルにもなりかねません。私はただ真実を知りたいだけです。それ以外は何もございませんわ」
「よく分かりました。しかたありませんな。愉快な話ではありませんがね、それではお話しいたしましょう。エリザベスさん、あなたのたっての希望だ……」

話が長くなるからと、コジモはエスプレッソとミネラル・ウォーターを持ってこさせ、社員にオフィスはもう閉めて先に帰るようにと指示をした。