人それぞれ

「こころのかたち」をわかりやすく説明するために、

時々、相手と自分を何かに例えてもらうことがあります。

ある日のこと、仕事に行けなくなってしまった彼に出会いました。

─ふーん。じゃあ、上司の方は例えるとしたら、何?

「えっ……ゴリラとか……イノシシとか……」

─なるほど、強いわけだ。

「ハイ」

─じゃあ、君は?

「動物ですか……?」

─思いつかないの?

「ハイ」なんでもいいよ。物でも。

「………………豆腐」

─豆腐?

「……ハイ」

本来の彼の「こころのかたち」はちゃんと生き物でした。

しかし、上司のキョーレツな指導を受けるうちにどんどん生気(せいき)がなくなり、

何か冷たくどうしようもなく柔らかくなってしまったのです。

上司は、彼なりの愛で彼をゴリラにしたかったのかもしれません。

しかし、資質を間違えるとこういう不幸が起こります。

不幸を避けるには、「己を知り、相手を知る」ということが、とても大切です。

この時彼は「気弱・真面目・要領が悪い」こんなかたちを持っていました。

もし上司が彼を伸ばしたいのなら、するべきことは、

「要領の悪い点を具体的に指導し、こちらから声かけして安心させ、できたら褒める」です。

真面目なので時間がかかったり残業したりは、あまり問題にはなりません。