海と私 <初島>

[写真1]大室山、小室山を望む

二〇一九年三月、私は台湾の工場のチェン一家を初島に迎えた。そして、クラブ最上階の露天風呂からまさに今、太陽が沈み行く伊豆半島と伊豆の島々を眺めている。

初島は熱海の沖合一〇キロメートル程にある小さな島であるが、一九七二年、ゴムボートで渡って以来、海の仲間「シーガル」の海のトレーニングの場であり、後年は家族でのファミリー・クルージングを楽しんでいた島でもあった。

目の前には熱海、母港であった網代、そして伊東・川奈が望まれ、左には大室山が、その隣には親子のように同じ形をした小さな小室山が並んで望まれる。大室山は愛艇シーガルで南の島からの帰航時には、ほぼ真北に位置していた事からいつも指針としていたかつての火山であった。

これら山々から海に突き出ている門脇埼・川奈崎の先は既に夕霞に包まれ始めていて、その上には半島の先に消えて行く天城山が未だかすかに見えていた。天城の裏は今でも西伊豆のあの美しい浜と波勝崎から石廊崎に至る荒々しい断崖が連なり、岩にのしかかる大きなうねりで泡立っている事であろう。

一方、半島の左に目を転じると大島が見える。先端の岬は斜めに盛り上がる、船にとってはいやらしい捻れたうねりを形成する乳が崎である。島の先には新島が落ち行く西日を受けてかすかに臨まれ、その間にはシッタカそっくりの尖った利島がかろうじて確認される。

式根島は平たい島で地平線から消えて見えないが、もう少し早い時間であればその先の火山を擁した神津島まで見えた事であろう。目の間に広がる海、その彼方に暮れ行く海、その全てが私の愛した海である。