違ってきた未来
禅は、いつものように行きつけのパブで、仲間二人と酒を飲んでいた。
「禅、吸うか?」「ああ……」禅は渡された煙草を吸った。それはマリファナだった。
大学二年の秋に日本を飛び出した禅は、成人式も出席せず海外に居た。国によってはマリファナに甘い国もある。まだ若かった禅は、それを吸う事に抵抗は無かった。
「よう、禅じゃないか?」禅は振り返った。
「剛史!くん……」
「久しぶりだな」
「お久しぶりです」
剛史は、地元の一学年上の先輩で、番長の将太にくっ付いて粋がっていた、ろくでもない奴だ。禅は、面倒くさい奴に会ったと思った。
「元気か?」
「元気です」
剛史は、連れを一人連れていた。そして禅の周りに座る仲間を見回し、禅に視線を戻すと言った。
「一緒に座ってもいいか?」禅は嫌だったが、断る理由が無かった。「どうぞ」
剛史は偉そうに、禅に横に座ると、連れにも座るように促した。禅は、嫌な予感がした。それは剛史の良い噂を聞かなかったからだ。剛史は、将太がいた頃は、将太の顔色を見て大人しくしていた。
将太は硬派だった。喧嘩はするが、それ以上の悪さはしなかった。だから、盗みや弱い者いじめをすると、そいつを殴った。剛史は、普段は将太にペコペコしていたが、将太が見ていない所では万引きをしたり、弱い者から金を巻き上げたりしていた。それが将太にばれた時はボコボコにされた。