エッセイ 日本画 2020.12.22 その一言を吐くために、どれほどの勇気がいったことか もう一度かあさんの聲が聴きたい 【第2回】 法邑 美智子 オールカラーでお届けする魂の響き、日本画作品40余点 いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う―― 母という存在をなくして、心は声なき言葉を語りだす。 失ってから、ふたたび得る。ひとすじの救済への過程。 「かあさん、ありがとう」 第21回 日本自費出版文化賞「詩歌部門賞」受賞作品を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 九十五歳で 九十五歳で乳ガンの手術 病室でかあさんは私を手招きして 「乳首が無くなったよ もう私女でないんかねぇ」 「そんなことはないんだよ」と私 後向きにほほがゆるんだ 全身に広がっていく痛みをうけとめ 最後まで自分のことは自分でして 家で息をひきとることを望んだかあさん 痛かったね がんばったね かあさんは立派でした 写真を拡大 「潮涼」
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『野球の子』 【第5回】 大藤 崇 父と僕を捨て、好きな男と出て行ってしまった母。「帰ってきてほしい」と伝えたくて… 僕は高校に入学した。入学と同時に、野球部に入部、甲子園大会で五連覇を達成した。ついでに国体も神宮大会も優勝。その年のドラフトでビッグ・キャッツから一位指名を受けて、プロ野球選手になった。あらゆるタイトルを独り占めし、ビッグ・キャッツを何度も日本一にした。そして、海を渡り、ニューヨーカーズに入団、世界一となった。というのは真っ赤な嘘で、本当なのは高校に入学した、ということだけだ。中学生まであんなに…