おんぶ

ようやくアッキーとひまりは、アッキーママの入院している病院の最寄り駅についた。あいにく病院への直行便のバスは行ったばかりで、誰も停留所に待っている人はいない。

他にバス停留所は見当たらなく困ってしまった。次のバスは三十分後で、アッキーはひとり悩んでしまった。

ひまりを不安にはさせたくなかったので、停留所にひまりを待たせて駅に戻り駅員に道を尋ねた。すると、歩くと二十分程だと教えてくれた。

アッキーは自分一人なら走れば十分もかからないだろうが、ひまりと一緒である。ひまりは走るのがとても遅いのだ。どうすればいいのだろう、どうしようか、すでに時間は四時を過ぎていた。

面会終了時間の五時に間に合うだろうか? アッキーママに会えるだろうか、バスを待てば時間に間に合わないし、ひまりと相談している時間も無い。やはり歩くしかない、いや、走るしかない。

ひまりのいる停留所に戻ると、いきなりひまりの手を握るとアッキーは走りだした。ひまりはびっくりする間もなくて、すぐ下の道路の段差につまずきそうになった。

アッキーの『走るぞ』の声にひまりも時間がないことを感じ走りだした。アッキーの手は汗で濡れていて熱かった。

一〇〇メートルを少し過ぎると、もうひまりの走る速度が急に落ちた。それでも繋がる手と手がひまりを懸命に走らせていた。

そして、しばらくはアッキーに付いていこうと必死にひまりは走った。けれど、まだ、三分も経っていないというのにひまりはアッキーの手を離して立ち止まってしまった。

「もうダメ、走れない」

ひまりの息は荒く肩が上下に動いていた。

「手紙、書いてきたんだろ、間に合わないぞ、頑張れ」

すると、ひまりは励まされ、また走りだした。もう、アッキーと手を離してひとりで走っている。この調子なら面会時間に間に合う。