船橋駅

アッキーは特急電車に飛び乗り、ひまりの待つ船橋駅に向かった。その電車の中で自分の出で立ちに初めて気付いて恥ずかしくなり呆れた。汗臭いサッカーのユニフォームのままであり、シューズは何色なのかもわからないほどひどく汚れていた。

電車の中で乗客はアッキーに近寄らず、目の前に座っていた少し白髪のある女性が席をずれて座り直した。いいや、いいや気にしない、それよりもひまりとアッキーママのお見舞いに行くのだ。

アッキーも行ったことがないのに、本当に病院までたどり着けるのかとても不安だった。けれど、ひまりには決して、悟られないようにしなくてはならない。アッキーが不安になればひまりはすぐに動揺するに違いない。

今の時間は四時である。面会時間の終了は五時だとアッキーパパから聞いていた。さあ、これからがアッキーとひまりの大冒険の始まりだった。

ひまりはホームの後ろの方のベンチに座っていた。赤いリュックサックがアッキーの目の中に飛び込んできた。

あたりをキョロキョロと見回しているひまりを見つけた。赤いリュックサックを両手で大事そうに抱えて浅くベンチに腰かけていた。

アッキーは大きく手を振ってひまりの名前を呼びながら、混んでいるホームを走った。途中で幼稚園くらいであろうか小さな男の子に軽くぶつかってしまい、アッキーはその男の子と一緒にいたお母さんに深々と頭を下げて謝った。

そして、ひまりの座っているベンチの前にやって来た。少し息がぜいぜいしていたアッキーだったが、『なに勝手なことしてるんだよ』と言おうとする前にひまりが、「ごめんなさい」と、ベンチから立ち上がって頭をぺこんと下げながら、か細い声で謝った。