公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では未曽有の大災害時に、補助金をもらうため「だけ」にグループを組んだ事例が相次いだことについて、筆者が語ります。
補助金で成長してはいけない
グループ補助金の特徴について論じてみたい。それは、グループ補助金が災害からの復旧資金である、ということだ。
「そんなことは当たり前だろう。言うまでもないことだ」と思われるだろうが、実はこの「復旧」が大問題になったのだ。グループ補助金が、東日本大震災による津波で流出、損壊した施設、設備の復旧資金であることは前に説明したが、この「復旧」とは「震災前の状態に戻す」ということなのだ。
例えば、震災前に木造であった店舗を建て替える際に、今度は災害に耐えられるよう鉄筋コンクリートにするというのは認められず、また木造にしなければならない。建築面積が増えることも認められない。もちろん、鉄筋コンクリートにして従前よりも広い建物を再建することはできるが、「その場合は補助金は出ません。自己資金でやってください」というわけだ。
ある企業が、明治時代につくられたという石造りの貯蔵庫を震災前まで使用していた。それが津波で流失し、グループ補助金で復旧することが認められた。