しかも、容姿は端麗である。人売りが、福建(フージェン)から、雲南(ユンナン)から―ときには朝鮮や北方からも――美少年ばかりをえらんで、連れて来るからである。

中には、少女と見まごうほどの者さえいる。色白く、ひげはなく、子供のうちにはやばやと去勢されているから、のど仏もできず、声は高く澄んだままである。

考えてみれば、彼らが、刺激をもとめる女官たちの、餌食にならないはずがない。なにしろ、宮中にいるまったき男は、皇帝陛下だけであると言って過言ではなく、その皇帝陛下が、女官などに情をかけることなど、あるはずもない。

皇宮の妃嬪ですら、皇帝の顔を見たことのない方がいるというほどだ。だから、彼女たちの胸をときめかす対象は、若くて、見目うるわしい宦官となるのであろう。

「たすけてください」

女官たちにもみくちゃにされていた二人が、私を見るや、取り巻きをふりほどいて、まろびでて来た。その目には、恐怖のいろさえ、浮かんでいる。

年嵩(としかさ)の女官のひとりが、私の前に立ちはだかった。見上げるほどの大女である。それが、屹(きっ)と私をにらんで、言い放った。

「あなたには関係ないことでしょう。その二人を、こっちへよこしなさい」