第5章 社会人に求められる能力とは
人間力が弱くなった企業社会
ここでは3つの社会人基礎力のうちのひとつ、チーム力について考えてみたいと思います。チーム力は発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力の6つの要素に分けられます。なかでもビジネスの世界で力を発揮するためにもっとも大切なものがストレスコントロールです。
戦後の創業期にはオーナー経営者といわれる創業者らが、自らの信念に基づいて事業を手がけてきました。他人の評価より自らの信念を貫くことで仕事を発展させてきました。
神戸大学の三品和広教授らによる「日本企業の経営者──神話と実像」㊱によれば、電気精密上場企業全社の調査を行ったところ、1965年では創業者比率が49%であったものが、2010年にはわずか1.8%になっています。
日本の上場企業の経営者の多くがサラリーマン化していることがわかります。中小企業も、戦後に創業者が誕生させた企業をその家系の人間が守る同族企業においても、創業者精神が希薄になっているようです。
かつては松下幸之助、井深大、盛田昭夫、本田宗一郎、豊田喜一郎、佐治敬三、小林一三など人間力の豊かな経営者が数え切れないほど存在しました。
彼らの社会人的基礎力は高く、道徳観、倫理感、使命感に優れ、企業のみならずその考えは社会全体にまで及んでいました。中小企業であっても同じような気風を持つ経営者は数多く見られました。