第二章 ADHDを治療すると希望が見える

知識のある愛が一番の支え

⑨最後に、学校の担任と医師と保護者の三角関係を作ることが大切です。その関係を作るために、学校で困っていることを教師に書いてもらい、主治医がそれにコメントし、保護者がやり取りを読み保管し、問題と解決法を共有する「医療支援ファイル」という次画面のようなシートを作っています。

教師も医師も忙しくなかなか会えないので、このような交換日記が、教育と医療の連携には必要不可欠なのです。ただし、これは保険点数がとれないのでボランティア事業となります。

冒頭で療育とは、「科学と心」と教わったと言いましたが、その教授の教えにはまだ続きがあります。「心=Heartの文字の中にはartという文字が隠れている。そして、外来ではこのartも必要だ」というのです。

「art」というと指し示す幅が広いですが、外来では「演技力」が大切だと教授は教えてくれました。聞きづらいことも、雑談する中で何気なく、かつ細心の注意を払って聞き出さないといけないこともあります。

「うちの子どもが悪いわけがない」と敵意をむき出しにされたり、ぎっしりクレームをつづった手紙をわたされたりすることもあります。しかし、そんな時も、真っ向から否定をせず、まずは完全に味方を装って、悩みを聞き出します。

相手の心の扉を開けない限り、解決の糸口は見つかりません。これは、医師ではなくても、親御さんや教師にも、お子さんと向き合う時にぜひ心がけてほしいことです。

また、お子さんが、良いことをしたり、小さな声でも「ありがとう」などの挨拶をしたりしたら、「いい子だね!」と聞こえるように大袈げさ裟に褒めることも大切です。多少オーバーな演技になっても構いません。褒めてあげることが、発達障がいを抱えたお子さんにとって何よりの心の安定剤となるのです。