第2章 人類滅亡のリスクと回避

2 自然災害

3.地球に衝突して来る天体

直径10キロメートルの小惑星は直径13,000キロメートルの地球の1,300分の1でしかありません。すなわち、地球を直径13メートルの球体とすれば、小惑星は直径1センチメートルの球体(ではなく、歪んでいるかもしれません)になります。このような小さな小惑星が地球に衝突したところで、惑星としての地球的視点からは蚊に刺された程度のものでしかありません。

それでは、なぜそのような小さな小惑星の衝突が数千万年前に恐竜が絶滅した原因の有力候補になり、人類の滅亡に迄つながりかねないようなことになるのでしょうか? 

それは我々を含む動植物は地表から下へ約10キロメートルそして上の大気中へ約10キロメートルを主要生息圏としているからです。つまり、小惑星の衝突はこの主要生息圏を動植物の生息に適さない環境に変えてしまうということです。

直径10キロメートルの小惑星や彗星の衝突そのものから直接的に受ける災害は、爆発の熱線による焼死や火災、爆風による破壊、自然な地震のマグニチュードを越える地震や数百メートルを越える津波等、非常に甚大なものになりますが、これらは一時的なもので限られた地域に止まります。

人類の絶滅につながりかねない災害は間接的災害にあります。それは天体が衝突に際し粉々になった天体自体と共に粉砕された岩石や砂塵を成層圏に迄噴き上げることから生じる災害です。

これらの塵は何年も成層圏に止まり太陽光を遮蔽し地球を寒冷化するため、植物が弱ったり死滅することにより、植物を餌とする恐竜などの動物が絶滅することになります。動物が少なくなれば動物を餌とする動物も少なくなります。

すなわち、生態系や食物連鎖に壊滅的な変化が生じます。窒素や硫黄酸化物による酸性雨、オゾン層の破壊などによる環境破壊等も進みます。さらに、寒冷化の後には、植物による光合成が減少するため二酸化炭素が残り増大し温暖化になるというまるでジェットコースターに乗っているようなハチャメチャな環境を招来します。

このように、天体の衝突は惑星としての地球に甚大な災害をもたらすものではありませんが、我々動植物の主要生息圏に壊滅的災害をもたらします。