選択と義務

それから半年後、妻が自殺をした。遺書には社会や家族の足手まといになるのはもう嫌だといったことが書いてあった。

しかし僕はすぐに彼女は嘘をついていることがわかった。女性は子育てが大変なので、忙しいことに幸福を感じるようにできていると、聞いたことがある。つまり、義務を必要以上に果たせば、それだけ幸福を感じるのである。

しかし、どうしても働けなくなった状態になった場合、一日が退屈である。退屈になると、前に言ったとおり、悩む選択肢しかない。

何か嫌なことに向き合うということは、度を越せば、違う嫌なことから目を背けるということである。つまり、努力か悩むことのどちらかに偏りすぎて、もう片方の時間が少なくなるということである。

僕の場合は、悩むことに強く、義務を果たすことに弱いので悩むことに依存し、努力から目をそむけた。妻は逆である。彼女は悩みたくないのに悩むしかなかったので自殺したのである。

自殺には二種類ある。義務を果たすことが辛くて自殺する場合と、悩むのが辛くて自殺する場合である。