しかし市町村合併で広域化した地域ではどうか? 名前の知らない議員さんも多い。ましてやその方々がどんな考えを持っておられるのか議論する場所もありません。市長さんが当地を訪れるのは年に何回もないでしょう。そのような状況では車の両輪は困難な話です。
合併した市の中で以前より過疎化していた地域はさらに過疎高齢化が進んでいます。高齢の方は病気も多く内科、整形外科、眼科など多くの診療科を受診されることが多い。さらに車の運転ができない交通弱者も多いのです。
毎日の食材の調達すら週に1回訪問する娘が持ち込んだ物か地域を巡回する雑貨バスに頼っているのです。健康の急変時に助けてくれる家族はいない。隣家は? 周囲は空き家になっているのです。このような状況は現地を訪問し見ないとなかなか理解できません。
また地域では若者が減っています。こうした地域において病院の存在は高齢の方々の健康を守ると同時に地域づくりのためにも重要な拠点なのです。
当院には職員をはじめ、利用者、関係業者も含めると1日1000人以上の方が出入りされています。地域でこんなに多くの方が集まる場所はありません。
また当地のスーパー、タクシーの利用者は病院帰りの方が多い。こうした人の動きがあるから町内にある様々な職種の営業も成り立っています。「病院が無くなれば生きていけない」理由です。
また職員、関係企業のスタッフの多くは若者であり地域で家庭を営んでいます。「病院があるから安心して暮らせる」と居住する子育て世帯もあります。病院は医療の提供の場だけでなく過疎化予防、地域の活性化の砦なのです。
医師不足、赤字経営というだけで存続可否を考えるべきではありません。住民の方々はそのことをよくわかっているのです。