俺は優秀なのに、なぜこんな連中に合わせなければならないのだ

「そんなら神とかタタリとか、ビビりそうなことを言っとけ。ああ、そういう細かいことまで俺が考えなきゃいけないのか？　俺は食料調達の役割分担を考えるので精一杯なんだ。ちょっとは自分で考えろよ」

実権を握って以来、早坂はかなり神経質になっていた。多忙やストレスというより、鬱積していたものが一気に解放され、まわりの一切が愚かしく見えはじめたためである。

「俺のように優秀な者が、なぜこんなばかな連中に合わせなければならないのだ」。早坂は、笹見平の全ての方針を自分と沼田の二人で決めて、他のメンバーの意見は聞かなかった。

それでいて食料調達の割り振りは一人の無駄も無く、一片のデッドスペースも無く、いっときのあそびもなかった。まるで緻密なパズルのように、全てがきっちりとあてはまっている。他のメンバーが口を挟もうにも全く隙が無かった。

鎖国が布かれ、計画的収穫がはじまった。開墾部隊は敷地内の至るところを耕した。採取・狩猟部隊は、毎日朝から晩まで柵の外を這いずり回った。

しかし何も手に入れることができなかった。川田ら中学生男子は冷たい川に腰まで浸かって川魚を探したが、めだかのような細い魚をコップに少し獲っただけである。

泉は沼田に協力を仰ぎ、畑の予想収穫と食料の蓄えを計算し直した。春まで持たせるにはどのくらいの消費量が相応しいのか――まもなく沼田は数値を弾き出した。

「トウモロコシとコメが片手に少々。あと、ジャガイモが四分の一……」
「一食分よね？」
「いや、一日分だ」

早坂はその報告を受けたが悲嘆するでもなく、全メンバーを前に「とにかく探して、狩って、採って。とったらとった分だけ食べれるんだから！」そう言って発破をかけた。八割方完成している柵工事を一旦停止し、全員を食料調達に振り分けた。