第2章 人類滅亡のリスクと回避
1.宇宙
(2)宇宙の大きさ
我々人類は最初我々の住むこの地球が全世界であると考えていました。地球は宇宙の中心であり、月や太陽や星々は地球の周りを回っているという天動説がほんの数世紀前まで我々人類の最高の知識となっていました。ところで、多くの宗教は基本的にこのような認識の上に立ち立教されています。
時は下り、地球は太陽という恒星を公転している惑星の一つに過ぎないことがわかり、さらに20世紀の初頭から以降は観測器機の発達もあり天文学や宇宙物理学が著しい発達を遂げ、太陽でさえ銀河系(我々の在籍している天の川銀河)の中の千億超という恒星のそれも平凡な恒星であることがわかりました。恒星は太陽系のように幾つかの惑星を伴っているものもあります。
我々の銀河系は円盤状をしており、その腕の端から端までの距離は約10万光年あり、円盤の中心の厚みは約1万5千光年で、太陽系はその中心から約2万8千光年離れたところに位置しています。
天の川は地球から銀河系の中心部方向を見たもので多数の星々の集まりがミルクを流したように白っぽく見えているものです。銀河系から一番近くにある銀河は銀河系から16万~20万光年の距離にある比較的小型の銀河系の伴銀河である大・小マゼラン雲銀河で、その次は約230万光年の距離にあるアンドロメダ銀河ですが、これらの銀河は遠い未来には我々の銀河系と衝突し合体するという説が有力です。
我々の銀河系の直径は約10万光年ですが、観測可能な宇宙の地平線までの距離は数百億光年でその中には銀河が数千億も存在していると言われています。これは我々に観測可能な宇宙の地平線までのことですから、地平線の向こう側に続く我々の在籍しているこの宇宙の大きさはわかっていません。
(3)宇宙旅行
光の速さは1秒間に約30万キロメートルですから、化学燃料で飛ぶ現在のロケットの速さを1秒間10キロメートルとしますと、光の速さはロケットの3万倍になります。我々の住む銀河系の直径は約10万光年ですからこの距離をロケットで旅行しますと片道30億年かかることになります。
数百億光年ある宇宙の地平線までともなりますと片道に何と300兆年の数倍年かかることになります。宇宙の形状がわかっていないこともあり、宇宙は誕生時に迄逆に収縮してつぶれるのか、急激な加速膨張により星も銀河も引き裂かれるのか、または別の終わり方をするのか、その最期がどのようになるのかはわかっていませんが、宇宙における大方の星々は今後150億年ほどで燃え尽き宇宙は無秩序状態になると考えられています。
これを、究極的ではなくても宇宙の一応の終わりと考えますと、ロケットが宇宙の地平線に向かって出発して以後間もなく宇宙はその終わりを迎えることになります。
宇宙の地平線までの旅行は諦めて、我々の銀河系の中に限った旅行を考えても、ロケットの速さでは何億年、何十億年とかかります。仮に光の速さで旅行できたとしても何万年、何十万年もかかることになります。
旅行というからには地球内の楽しい旅行の感覚で数日、あるいは数か月そして幾ら長くても片道5年往復10年ほどでないと、人間の一生が高々100年程度であることを考慮しますと、旅行に花も実もある意味をもたせることはできません。
光速の宇宙船で旅行してもこのようなことですから、我々の宇宙旅行は当面精々太陽系内に限ったことになりそうです。因みに、我が太陽系から一番近い恒星のケンタウルス座のアルファ星でも我々から4.3光年の彼方にあります。これがいかに遠いのかは、地球から太陽迄の平均距離が光速で8分強であることと比較してみれば良くわかります。
仮に将来光速で航行する宇宙船を造ることができたとしても、宇宙旅行や宇宙探査は地球から精々数光年の範囲に限られたものになります。地球から10光年の範囲にある恒星の数は10個に満ちません。
さらに、又、光速あるいは光速に近い宇宙船での航行はややこしい問題を生じます。それは宇宙船内の時間と地球時間の間に生じる時間のずれから生じるものです。