第二章 釣りもアレも人間は新奇好き
禿げ頭を救う「生体陰毛移植」⁉
釣り場で竿を振っている時だけが釣りではない。
親しい釣友からの電話を受けている時、釣り日記の記録を読み返す時、そろそろシーズンになると思いを巡らせる時、仕事や行事の都合を考えながら、次の釣行の計画を立てる時、これら全てが釣りの延長線上にある楽しい時間だ。
先日も古いグラスの磯竿を整理していて、ひょんなことを思い付いた。
短くして、メバルの船用胴突き竿に改造するのだ。無論全て自分でする。
その時間が楽しい。結果は大成功だった。反発力の強いカーボンに比べて、グラスの柔らかなしなりが、メバルの食い込みに断然いい。
四十年も昔の磯釣り用のグラスロッド、「大島」「黒潮」「秩父」といった名竿(めいかん)を改造するのは名残惜しかったが、メバル釣りには最適だ。
凝(こ)る人は手許の部分をカーボンにするとなお良くなる。
釣り仲間の忘年会で、この話を得々として喋(しゃべ)ったところ、
「グラスにカーボンを継ぐとは、バランス的に感心しない」と異論が出た。
「チョン切れたヘノコが数時間経っても、元通りに接続できる時代です、グラスにカーボンなど全く問題ない」と無理やり理屈をつけて、反論に加わる人もおる。
チョン切れたヘノコとは、アメリカで起きた事件のことだ。暴力夫に頭にきた妻が、旦那のソレをナイフで切り取り、車の窓から捨てたというあの話である。
我ら釣り仲間の話は予想もしないところから始まり、大飛躍(だいひやく)をするところに問題があるが、それはさておき、移植手術の盛んな昨今、心臓や肝臓、腎臓の移植に比べたら、体の外部に飛び出た突起物の移植手術など外科医にとってなんの造作もないことであろう。
万一失敗したところで生命に危険はない。されば、案外と気楽な手術なのかもしれぬ。