突起とくれば、「へこみ」陥没側(かんぼつがわ)も取り上げねばなるまい。古事記に言うところの、「成り成りて成(な)り余れるところ」と「成り成りて成(な)り合はざるところ」のお話である。
昨今、ミスターレディーと称して、盛んにテレビで拝見しておるが、心底女性に生まれ変わりたい彼女らにとって、股間のぶらぶらはまさに悲劇的、決定的問題だ。
下着から始まって、化粧も艶(あで)やかに完ぺきな女装をしても、股間のもっこりを思い出した時、彼女たちを絶望的な孤独感が襲(おそ)うはずである。
そこで彼女たちは、資金を貯め、海外に渡り、玉を抜き、不要な突起物を切り落とし、そこへ縦穴をしつらえるのである。
縦穴は本人の腸の一部を移植し、その他諸々の形を作り上げる。その奥にある子宮や卵巣は人工的には作れないが、大切な部分はふっくらととても綺麗(きれい)な出来栄えになるという。
しかし手術が終わったからといって安心はできない。実はここからが大変なのだ。放っておいたら折角の縦穴が癒着(ゆちゃく)してしまう。
手術の終わったその時から、痛いのを我慢して何かを入れて、癒着を防止しなければならない。術後の麻酔切れの痛さと重なって、血と涙の物語なのだ。
オイラは真剣に申し上げる。LGBTの方たちの人権尊重を言うなら性同一性障害者の性転換手術を保険医療対象にすべきである。これは至極当然な主張である(二〇一八年四月より保険医療対象となった)。
桜木紫乃著『緋(ひ)の河』を読んだ。美人でスタイル抜群のカルーセル麻紀さんをモデルにした小説だ。彼女の苦悩は無論その積極的な生き方に感動した。
「性同一性障害」だった彼女は外国で手術を受け、同じ悩みと苦悩を抱える人たちのために、マスコミにも登場し、公人として強く生きたのである。