第1章 医療
体重チェック
「変わらないと思います」。体重について尋ねた私に対しこんな答えが返ってくることが多い。
「変わらないって前は何キロでしたっけ」「そんなに変わっていないと思うんですけれど」。やはり具体的な数値は返って来ません。気を利かせたスタッフが素早く体重計を用意し乗って頂きます。
「あれー。変わっていないと思ったけれどいつの間にか増えている」。化石医師は診察時に必ず体重をチェックします。特に糖尿病や脂質異常の患者さんの場合には欠かすことはありません。
毎回尋ねることですが何故か明確な答えが返って来ません。特に肥満している女性の方にこの傾向が強い。理想とギャップのある自己体重を認めたくないのでしょうか。
体重の変動はとても貴重な健康のバロメーターです。増えても減ってもそれは身体に何らかの異常が生じていることを意味しています。
例えば急激な体重増加は体内の水分増加を意味しています。遠からず呼吸が苦しくなる心不全症状の出現や腎臓機能障害の悪化、肝機能障害の悪化などに結びついて来ます。もっとも過食の覚えのある方はこの類ではありません。
一方、急激な体重減少も身体の異常の重要な信号です。減量目的の食事療法や運動療法をやったことがないのにやせて来た。今までと同じように食事しているのに何故か体重が減って来た。危険信号です。
糖尿病の悪化もあるでしょうし、エネルギーを消耗させる疾患が生じている可能性があります。一番注意しなければいけないことは体内のどこかに悪性腫瘍が増殖した可能性があることです。