第1章 医療
レセプト
急性膵炎の治療のために胃管を挿入したら「何のために胃管を入れたのか」との疑義照会が戻って来ました。胃液が十二指腸に流れ込むとその刺激で膵液分泌が生じる。傷ついている膵臓を刺激しないため、胃液を抜く治療は最近はあまり行われませんが、以前は必須で行われた治療手段です。
今回の場合患者さんの状態から胃液を抜いておいた方が良いと考え行いました。
がん患者さんの痛みを取るために麻薬を用いたら「がん性疼痛」の病名が抜けています。
急性胃腸炎の患者さんに下痢止め吐き気止めを処方したら「下痢症」「嘔吐症」の病名が抜けています。
「この咳止めは慢性気管支炎ならいいが急性気管支炎では認められない」。
最近レセプトの度に憂鬱になります。周知のように日本の医療は健康保険で行われています。そのため保険で規定された以外の医療は支払いを拒否されます。間違ったことをしていないかと厳密に審査することは当たり前です。
しかし時には前述のように少し「何だこれは」と悲しくなるような事例に出会います。
急性膵炎の時に胃液を吸引しておくのは常識であり何の疑問もない(ちなみに化石医師の一番の専門は膵臓疾患であり研究テーマ、学位論文は膵炎に関するものでした)。それなのにそれを行った理由を説明しなければならない。
がん患者さんに対し緩和ケアという言葉が使われます。緩和とは痛みを取り苦痛を軽減する意味です。進行したがん患者さんの一番の苦痛は痛みでしょう。その痛みを軽減する手段として麻薬が用いられます。