第2章 障害のある子どもの理解

書字表出障害

文字の「読み」ができるようになって、「書き」ができるようになります。

ところが、読めたとしても書くことになると、自分の思うとおりに手や腕が動かず、上手に書くことができないのです。私たちは、いつも利き手で文字を書いていますが、ペンを利き手ではない反対に持ち替えて書いてみれば、改めて文字を書くことの大変さを思い知らされます。

利き手でないと力が入らず、少し書くだけでたいへん疲れてイライラしてきます。そして、書くのが嫌になり勉強自体をしたくなくなります。

小学校以降での勉強ではノートをとることが学習活動の中心になりますので、徐々に勉強に遅れをきたすことになります。書字表出障害には次のような症状が見られます。

①文字の大きさや並びの不揃(ふぞろ)い
②促音(つまる音)や撥音(はつおん)(「ん」と表記される鼻音)の表記の誤り
③形態が似ている文字の誤り(例、「しこ」と「に」、「め」と「ぬ」、「は」と「ほ」、「す」と「む」)
④鏡文字や部分の書き誤り

最近はICT(情報通信技術)教材の活用が進んできています。これは学習障害をもつ子どもには朗報です。授業のなかでタブレットを使ったり、板書をカメラで写し撮ったりすることに抵抗がなくなってきました。

このように便利なツールを使うという合理的配慮が、多くの学習活動でおこなわれる必要があるのですが、これには学校の先生と子ども、学級の周囲との合意が必要です。すべての子どもが授業のなかで、タブレットを使うようになると、学習障害のある子の心理的負担はなくなっていきます。そうでないと特別扱いのような感じになって、周囲から批判を受けたり、本人も便利ツールを使うことに引け目を感じたりします。