着任直後の緊急案件であったモザンビークとジンバブエの問題がかたづくと、すぐに南アフリカ・マキシマ社本体の再建課題に着手した。先ず手がけたのが人件費の削減である。

会社の立て直しにあたるには、どうしてもコストにメスを入れなければならない。その中で先ず手を付けなければならないのは、諸経費の中で半分を占める人件費だ。

人件費削減は時間がかかるかもしれないが、必ずやらねばならない。方法としては人員をカットするか、給料を減らすか、どっちもやるかだ。

いずれにせよ、いやな仕事だし会社の雰囲気も悪くなる。実行にはローカルスタッフを巻き込むわけには行かない。

この汚れ仕事こそ日本人派遣者の役割だ。そう考えた高倉は、社長室長の秋山と策を練った。

「現在の人件費の売上高比率はどうなっている?」

秋山はパソコン上の損益計算書を見ながら答えた。

「一五%です」
「大きい。一二%台に持って行きたい。現在の給与体系をキープすると仮定して何人減らさなければならないか?」

秋山は計算機を叩いて、

「はい、白人スタッフの平均給与が日本円でいえば年間百六十万円位で、黒人は六十万円程度です。ですから、削減する白人と黒人の割合とか、どのクラスを減らしていくかでかなり変わります。現組織を崩さないとして計算すると、目安としては五百人くらい削減が必要です」