Chapter5 対立

「ユウト!」
「ユヒト!」
「ユータロー!」
「イニギ!」
「スソノ」
「いえーい!」なぜか交わされるハイタッチ。

すると盛江が猛烈なハイテンションで
「ヘイヘイ! オレ、スナオ! スナオ!」

小刻みな腰振りとステップで輪の真ん中に繰り出す。探検隊と縄文の若者の両方からドッと笑いが起きた。みんな涙を浮かべ、腹を抱えて身をよじっている。

初対面で言葉も通じないのに――林は、久しぶりにこんなに笑ったと、感無量だった。顔は涙でぐちゃぐちゃで、頬肉も顎もくたびれた。探検隊はみんなそうだった。もしかしたら、これは笑い泣きではなく、嬉し泣きだったかもしれない。今まで泣き言も言わずにやってきて、久しぶりにタガが外れた感じがした。

林は涙を拭いつつ考えた。集落の人々は探検隊のことをどう捉えたのだろう。見知らぬ若者が突然やって来て、スイカをくれた上に、涙を流してばか笑いしている。怪しんだには違いない。だがユヒトら縄文の若者は、探検隊を受け入れてくれた。林はそれがありがたかった。

ひとしきり騒ぎ立てて、気が付くと日は山際まで傾いていた。しまった――林は下唇をかんだ。まだ笹見平に戻るだけの時間はあると思っていた。うっかり調子に乗って時間を忘れていた。

すると、ユヒトが近づいてきて、何やら言った。縄文の言葉がわからず苦笑してごまかしていると、ユヒトはそばの竪穴式住居を指差し、両手の平を合わせて頬の片側によせ、目を閉じる仕草をした。

――今夜は泊っていけということ……かな?

どうやらこのジェスチャーは時代を超えているらしい。同じことを真似てみると、ユヒトは笑顔でうなずいた。

側にいた岸谷・盛江・砂川がそれぞれ

「笹見平には三日の予定で言ってある」
「せっかく仲良くなったんだ。親睦を深めるべきだ」
「夜に戻るのは危険だぜ。野獣がでるかもしれない」

林はみなの意見を採り厚意に甘えることにした。長老は、先ほどから若者同士が仲良くしているのをうれしそうに見ていた。ユヒトが長老に何か言うと、大きくうなずき、あたりにいた縄文人に何かを伝えた。すると人々は心得て散って行った。