【前回記事を読む】20歳以上年下の女性に「モテそう」と言われ、初めて会った人なのに色々打ち明けてしまった。「連絡先ください」と言われ…
第2章 長い空白のあとで
その日、アパートに帰ってから、夏人は昨日かからなかった夕海の電話番号にもう1度かけてみた。でもやはり「ただいまこの電話は使われていません」というメッセージが戻ってくるだけだった。電話番号を変えたのかな、今度はメールを送ってみようと夏人は思った。
先日の夢幻(ゆめまぼろし)のような銀座線の中で川村が言っていたように夕海は本当にもうこの世にいないのか?そんな考えを頭の中で巡らせながら夏人は夕海にメールを送るのは20年ぶりなので何を書けばいいか分からなかった。いろいろと考えすぎて、結局、簡単なメールしか書けなかった。
「元気? 去年の夏に電話くれたみたいだけれど、何か用だった?」
しばらく待ったがメールに返信はない。何も戻ってこないのでメールアドレスはまだ有効のようだ。でもたとえ相手がこの世からいなくなっていても、誰かが削除しない限りメールアドレスはそのまま残るだろう。やっぱり無理か、と思って夏人はベッドに横になった。そしてすぐに眠ってしまった。
翌朝、起きてまずメールをチェックしてみた。返信はないだろうと思っていたが、意外にも返信が届いていた。
「メールありがとう。去年の夏は、夏生まれの夏人のこと思い出して、どうしているかな、声を聞きたいなと思ったけれど、途中で切ってしまったんだ。随分久しぶりね。私は元気にしているけど、夏人は?」
20数年の時空間が突然つながった不思議な感覚だ。気持ちが少し跳ねた。
「僕も元気だよ。本当に久しぶりだ」
「そうね。20年以上交信してないね」