「でもこうやってメールで連絡すると20年前に戻ったみたいだ」

「ほんとね。ネット上だけれど、また会えてほんとに嬉しい」

夏人は夕海と昔と同じようにメールを交換しながら、遠い過去が知らない場所を通り抜けて現在に飛び込んできたような不思議な感覚を持った。そしてその感覚と川村との会話が頭の中で交錯した。

「そういえば、2日前に銀座線の中で偶然川村に会った時に、君が死んだと言われたので、本当のことか確かめようと思って久しぶりに電話したけどかからなかったので、メールを送ってみたんだ」

今度はなかなか返事が来ない。仕事にでも行ったのかなと思った夏人は、また後で連絡してみようと思って、パソコンに向かって仕事を始めた。

窓から入ってくる昼の光が夕方の光に置き換わり、あちらこちらの部屋の電気がつき始める頃、夕海からの返信があった。

「ちょっと急ぎの用が入ったので返信遅れてごめんね。私は元気よ。でも、もし私が死んでいたらメール送っても確かめようがないじゃない」

「確かに。よかったら電話してほしい。僕の電話番号は変わっていないから」

「ちょっと事情があって今は携帯電話を使っていないの。メールでやり取りするのはまどろっこしいので、何かSNSでやり取りしない?」

「事情って?」

「それはいずれ話すよ。SNSは何を使ってる?」

「夕海がいなくなってからは誰かとこうやってやり取りすることもなかったので、未だにメールしか使っていない。ほぼ仕事のメールだけだよ」

夏人はメールを送ってからしばらく待ったが今度は返信がなかった。夕海は生きていた。事情があるということだけど、どこにいるのだろう。今日、仕事が終わったらまたメールしてみよう。

やっぱりクリスマスイブに地下鉄の中で川村に夕海が死んだと言われたことは夢だったのだと夏人は思った。大体、あの地下鉄は渋谷に行くまでに見たこともないような場所を走ったりして現実とは思えなかった。死んだのは川村の方だったのかも知れない。