⑪訪問医療

息子達のサポートで、毎月一回さやま総合クリニックで診療を受けていました。二人で交代でしたから離れて住んでいても二か月に一度は母親に会うことができ、車いすから自家用車への乗降、車の運転、病院に着いてからの車から車いすへの乗り換え、車いすでの診察室までの往復等、全てお任せで頼みました。

この一連の動きを通じて、母親の二か月前からの状態の変化、その日の体調等を直接把握でき、単なる通院サポート以外に、母親に関する現時点でのリアルな情報を得ることができて、不安の中にも安心できる何かを見つけることができたのではないかと思っていました。

普通に会話できていた段階のあとには、次第に口数が少なくなり、表情に心の動きが出にくくなりました。久しぶりに息子達に会っても笑顔で迎えることが少なくなり、息子達も当惑する半面、これが病気によるものだということを認識したように感じていました。

母親とどのように接するのが良いのか、経験もないことですから戸惑っていたのではないかと思います。ほかの用事で家に来た時も、ひとことも会話を交わさずに帰ったこともありましたから。

息子達のサポートで、さやま総合クリニックに通院していたある時、主治医の先生から訪問医療を考えてはどうかという提案をいただきました。背中に褥瘡(じょくそう)ができ通院より訪問医療の方が良いのではないかとの判断をされたようでした。石心会病院系列の施設にも訪問医療施設があるという情報もあわせていただきました。

それまで訪問医療を受けるという発想はありませんでしたから、早速埼玉石心会病院の受付に行き事情を話して連絡先を教えてもらい、通院による診療から訪問医療に移行するためのタイミングロスを心配することなく、さやま地域ケアクリニックで診療を継続していただくことができました。

この診療方法の変更に対して、妻は特段の関心は示しませんでしたが、自宅での医師の先生と看護師さんとの会話を楽しんでいた時期もありましたから、何ら抵抗なく受け入れていたことは、よく分かりました。

後期の後半になり、しゃべることが難しくなった時にも、主治医の先生が見えると、何か表情が柔らかになるのが印象的でした。そして、天に召される前日が最後の訪問医療の日になり、主治医の先生が家人以外では最後に会話を交わした人となったことも、何か深いご縁を感じました。

通院医療から訪問医療に切り替えたことにより、家人の負担が大幅に軽減されたことはいうまでもありません。

試し読み連載は、今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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