正太郎は、一ヶ月前の臨海病院着任直後、事務長の指示でただちに名古屋にある医王会中央病院にある医王会本部を訪ねた。医王会グループ会長である天城敬三に新任の挨拶をするためであった。
その時も、天城は満面の笑みで正太郎を迎えてくれた。そして、正太郎が自己紹介する前に、天城は、正太郎の出身大学から研修先、そして町立養老病院、東部救命救急センターでの勤務、それらを活躍と言ってくれ、全部すらすらと諳(そら)んじてみせた。
その上、感激して言葉も出ずに畏まってしまった正太郎の手を引くようにしてソファーを勧めてくれた。
この時、正太郎は、浅草で産婦人科の町医者だった亡き父親の遺志を継いで医師になったこと、今は廃業した実家で母が一人暮らしをしていること、妹が一人いて、会社員の夫との間に子供が一人いること、そして自分は今、東部救命救急センター時代に結婚した妻と二人暮らしであることなどを聞かれるままに話した。
正太郎の話に耳を傾けた後「境遇が似ているね」と前置きして語ってくれた天城会長の話に、正太郎は深く感銘を受けた。
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