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「それでは、本年最初の科長会議を始めさせていただきます。年初めの今回は会長にもご列席を賜りましたので、まず会長より年頭のご挨拶を賜りたいと存じます。会長、よろしくお願いいたします」
先ほどロイヤルサルーンのドアを恭しく開けた男性が、そう言うと天城会長に向かって頭を下げた。まるで会長秘書のように振る舞うその男性は、医王会本部の経営統合部長、鬼塚壮一郎だ。
ピンストライプの入ったネイビーブルーのスーツを見事に着こなしており、秘書にしては身なりが良すぎると正太郎は思っていたが、やはり秘書ではなかった。銀縁メガネの奥の目が鋭い。身長は正太郎と同じくらいだが、痩身で引き締まった体型だ。正太郎の横に座る眼科の部長が、鬼塚は元財務官僚だと耳打ちしてくれた。
「皆さん、明けましておめでとうございます」
会長の天城が、笑顔で出席者全員を見渡しながら言った。どう見ても、人の良い小太りのおじさんにしか見えない。会議室には、先ほど玄関で会長を出迎えた病院幹部のほかに、各診療科の科長たちがコの字に配された会議机に整然と並び神妙な顔で座していた。末席には、書記係の総務課長と二人の女性職員が畏(かしこ)まっている。
「おめでとうございます」
全員が、一斉に頭を下げて返礼をした。
「皆さん、本年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、こうして新しい年を迎えましたが、我々医療界を取り巻く環境は年々厳しさを増しております。皆さんもご存じの通り、国が進める第8次医療計画がすでに昨年から始まっており、グループ内の各病院において医療の改革、改善が待ったなしの状況であります」
天城は、ひとしきり国が進める第8次医療計画について講釈を垂れた。その中で、がん、脳卒中などの主要五疾病に加え、救急医療、災害医療などの六事業のそれぞれに対し、今後グループとしても重点的に取り組んでいくことを強調した。
「幸いこの関東臨海病院には、このたび、重点六事業の筆頭とも言える救急医療にエキスパートの幸田先生をお迎えすることができましたので、今後の発展を大いに期待しているところであります」
そう言うと、天城はにこやかな表情で正太郎の方を見た。突然のことに正太郎はどぎまぎして頬が熱くなるのを感じた。