平日のこの時間帯にこの町を歩いたことはないので、この人通りのなさが普通じゃないのかは分からない。なのに、寂しいなんてことはしっかり感じる。

開店準備を始めていてもいいはずの飲み屋に人の気配はない。

前に一度、珍しく早めに帰ってこられた日に行ったことがある焼き鳥屋に提灯は下がっていない。

地下鉄の出入り口から出てきたスーツ姿のマスクをした人たちは、まだ明るいうちの帰宅のはずなのに終電帰りのような疲労感を漂わせている。

コンビニは通常営業。

真新しい店構えのパン屋は営業時間がすでに終わっているようで閉まっている。

夜の営業が中心のはずの中華料理屋は、店先で総菜を売っていて、残り少なくなった商品を乗せたテーブルを残してテントの片付けを始めている。

斜向(はすむ)かいの総菜屋はシャッターを下ろすところだった。

チェーン店の弁当屋は深夜まで営業している。俺も何度もお世話になった。

本当なら、外で遊んでいた子供たちが家に帰る姿や、友人と談笑しながら買い食いしている学生の姿だってあったのかもしれない。

不要不急のものは追いやられ、今あるのは必要最小限の生活なんだ。

歩いて出てきたのを後悔した。自転車でさっさと通り過ぎてしまえば見なくて済んだものが見えてしまった。

それでも俺は風呂に入りに行く。

まだあるなら総菜を買って帰るし、ないなら弁当だ。

コンビニにだって寄るつもりでいる。

小さな息遣いしか許されない中で手にした人間らしい生活を謳歌するんだ。

だって、明日にはどうなってるか分かったもんじゃないんだから。

次回更新は10月30日(金)、8時の予定です。

 

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