第1章 二〇一九年二月八日付け医事課長通知
「医師による異状死体の届出の徹底について」の衝撃と誤解の解消
(2)二〇一九年二月八日付け医事課長通知「医師による異状死体の届出の徹底について」の問題点
医師法第21条と厚労省見解
医師法第21条(異状死体等の届出義務)は、「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定し、同33条の2に罰則規定がある。
この規定は、「異状死体」の届出義務であり、「異状死」の届出義務ではない。
死体(deadbody)と死(death)は別物である。
この「死体」と「死」の違いが混同され、診療関連死に対する異状死体等の届出義務違反として医師が逮捕され、「医療崩壊」を招いた。
しかしながら、東京都立広尾病院事件判決(二〇〇三年東京高裁判決、二〇〇四年最高裁判決)に基づき、二〇一二~一四年にかけて、厚労省は、田原克志医事課長発言、大坪寛子医療安全推進室長発言、田村憲久厚労大臣発言(いずれも肩書は当時)で、「異状死体」と「異状死」の混同という過去の誤りを修正した。
田原克志医事課長は、二〇一二年十月二十六日、厚労省の「第8回 医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」で、「厚労省は診療関連死について届け出るべきと言ったことはない」と述べ、「死体の外表を見た医師が検案して、異状だと考える場合は警察署に届け出る」、「異状と判断できなければ届出の必要はない」と述べている。