「よく会うの?」という、私の続けての質問には、「ときどき帰って会おうと思うけれど、もう空気みたいな存在よ」なんてことを言った。恋人のいたことのない自分からしてみればノロケとしか言いようがない。けっこう羨(うらや)ましいというのが本音だった。

由紀ちゃんに限らず、すでに彼氏のいるクラスメイトは総じて大人っぽく見えて、気持ちの余裕を感じる。良いか悪いかは別にしても、なんか落ち着いて見えた。

「それでさぁ智美、一緒にやりたいことがあるんだけどさぁ……」

少し真面目な顔に戻って由紀ちゃんは問いかけた。

「なに、改まって」

なにかの頼みごとかと思った。

「一緒にピアス開けない?」

おっ、なるほど、女子の通過儀礼みたいなものだ。それは自分も一応考えていた。きっかけがなかったので、ずっと先延ばしにしていたけれど、由紀ちゃんと一緒にできるなら心強い。

「ピアスねぇ、いいよ。別にやっちゃいけないっていう学則はないしね」

二つ返事でOKしたかった。でもちょっと気がかりなこともある。

「でも、湿度の高い時期にやるとキズが膿(う)んだりすることがあるって聞くよ」

以前にネットで調べたときに、そのような注意が書かれていたことを思い出した。

「だからって冬まで待っていられないよ。ちゃんとしたところでやって、消毒をまめにすれば大丈夫だよ」

由紀ちゃんはもうやる気満々だったから、私はそれに従うしかなかった。

「そうね……、うん、じゃあ、開けよっか!」

なんのことはない、大学病院の形成外科にかかればいいだけで、ピアッサーを使うことによってあっさり開けてくれた。こういうとき看護学校は便利だ。形成外科の先生も優しくて面白かった。

「ピアスを開けることで、いままで止まっていた運気の流れを動かすことができるって聞くよ。早く一人前の看護師になって一緒に仕事したいね」なんてことを告げてくれた。意図は不明だが、なんか嬉しいことを言ってくれるなぁと思った。いまの私にはいろいろな意味でピッタリな励ましだった。おかげで痛みもほとんど感じなかった。

自分は左右に一つずつ。由紀ちゃんは左に一つ、右に二つ開けた。「なんで二つ開けるの?」と聞いたら、「左耳に奇数個、右耳に偶数個開けると縁起がいいのよ!」ということだった。根拠はよくわからなかったけれど。

「ファーストピアス、開けられたねぇ、だから心配ないって言ったでしょう。智美はちょっと臆病だからね」

確かに奥手で内気というのが私だった。それはまあ一八年間これできてしまったわけだから、急には変えられない。

それでも、「なんか一つ大人になった気がするね」と私が言うと、由紀ちゃんは、「それじゃあ、これから車の免許を取って、SNSの投稿を増やして、パーソナルカラー診断をしてもらって、それによってはヘアカラーも変えなくっちゃね。いろいろとやることはあるよぉ」とのことだった。

すごいなぁ由紀ちゃんは。高校を卒業しただけなのにそんなにやることがあるのか。ピアスまではついていけたけれど、これからはどうなるのだろう。でもきっと、こうやって女子は女性へと変化していくのかもしれない。私の期待はさらに膨らんでいった。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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