【前回の記事を読む】同じ出来事なのに、どうしてこんなにも見方が違うのか。正しいのは自分だと思っていたけれど、相手の受け取り方に触れてみると…

第一部 人は、知識だけでは変われない
――行動の前にあるもの

第一章 なぜ、正しいことを知っていても行動できないのか

私たちは、正しいことを知っています。しかし、知っていることと、実際にできることのあいだには、大きな距離があります。三つの例を挙げます。

第一に「人の話は最後まで聴いたほうがよい」。

これは、多くの人が理解しています。しかし実際には、相手が話している途中で口を挟んでしまうことがあります。相手の言葉を最後まで待てず、先に結論を言ってしまうことがあります。

相手が本当に言いたかったことを聴く前に、自分の中で答えを決めてしまうことがあります。

第二に「部下には任せたほうがよい」。

これも、多くの上司が分かっています。しかし実際には、不安になって細かく確認してしまう。任せたはずなのに、途中で口を出してしまう。

結果として、部下は任されているというより、監視されていると感じてしまう。

第三に「早めに相談したほうがよい」。

これも、誰もが分かっています。しかし実際には、もう少し自分で何とかしようと抱え込んでしまう。

相談が遅れ、問題が大きくなってからようやく報告する。そしてあとから、もっと早く言えばよかったと思う。

こうしたことは、誰にでもあります。「分かっている」「大切だ」とも思っている。それでも、同じ場面になると、また同じ反応をしてしまう。このとき、私たちは自分を責めます。

「自分は意志が弱いのではないか」

「覚悟が足りないのではないか」

「本気で変わろうとしていないのではないか」。

しかし、本当にそうなのでしょうか。人は、本当に知識があれば変われるのでしょうか。正しいことを理解すれば、正しい行動ができるのでしょうか。頭で納得すれば、心と身体はその通りに動くのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。知識は大切です。正しい理解も必要です。しかし、知識だけでは人は変われません。

なぜなら、行動は知識だけから生まれているのではないからです。