対話 分かっているのに、できない理由

ある管理職の方とのコーチングで、こんな対話がありました。

コーチ「部下の話を最後まで聴くことは、大切だと思いますか」

クライアント「はい。それは分かっています。研修でも何度も学びましたし、自分でも大事だと思っています」

コーチ「では、実際の場面ではどうでしょう」

クライアント「……できていないですね。途中で口を挟んでしまいます」

コーチ「なぜ、口を挟んでしまうのでしょう」

クライアント「話を聴いているうちに、結論が見えてしまうのです。早く答えを出したほうが、部下のためにもなると思ってしまいます」

コーチ「つまり、”聴くことが大切だ”という知識はあるけれど、その瞬間には”早く解決しなければならない”という解釈が先に立ち上がっているのですね」

クライアント「そうかもしれません。自分では、よかれと思っていました」

コーチ「そのとき、心の中にはどんな感情がありますか」

クライアント「焦りです。あと、このままでは成果が遅れるという不安もあります」

コーチ「では、行動の前には焦りや不安があり、その前には”早く解決しないといけない”という解釈があるのかもしれませんね」

クライアント「……そう考えると、単に我慢が足りないわけではない気がします」

コーチ「はい。変えるべきなのは、最初から行動ではないのかもしれません。まず見るべきなのは、その行動を生んでいる解釈です」

クライアント「だから、分かっていても変われなかったのですね」

この対話で重要なのは、クライアントが”聴くことの大切さ”を知らなかったわけではない、ということです。

知識はありました。理解もしていました。必要性も感じていました。それでも、現実には口を挟んでしまう。

なぜなら、その瞬間に「最後まで聴こう」という知識よりも先に、別の解釈が立ち上がっていたからです。

「このままでは時間がかかる」

「早く答えを出したほうがよい」

「自分が助けたほうが、部下のためになる」

「チームの成果を守らなければならない」。

この解釈が、焦りを生みます。焦りが、口を挟む行動を生みます。

つまり、行動の前には感情があります。そして感情の前には、解釈があります。

ここが、本書全体の中心になります。