【前回の記事を読む】部下を育てたいのに、なぜか萎縮させてしまう。信じているのに任せきれない…私は長い間、その原因を「能力」の差だと思っていたが…

はじめに

分かっているのに、なぜ同じことを繰り返すのか

自分はいま、何に反応しているのか。なぜ、この言葉に腹が立つのか。なぜ、あの人の沈黙が不安になるのか。なぜ、部下に任せたいのに、手を出してしまうのか。なぜ、挑戦したいのに、失敗を恐れて止まってしまうのか。なぜ、正しいことを知っているのに、同じ反応を繰り返してしまうのか。

この心の動きに気づける人は、失敗しても学びに変えていきます。人との違いに出合っても、相手を決めつけず、理解しようとします。自分の弱さに触れても、それを否定せず、成長の入口にしていきます。

一方で、この心の動きに気づけないまま進んでしまうと、知識やスキルが高くても、どこかで行き詰まります。成果を出しているのに、人がついてこない。正しいことを言っているのに、相手に届かない。部下を育てたいのに、部下が萎縮する。組織をよくしたいのに、周囲との関係が壊れていく。

変わりたいと思っているのに、また同じ反応をしてしまう。その理由は、意志が弱いからだけではありません。知識が足りないからだけでもありません。努力が足りないからだけでもありません。

多くの場合、行動の手前にある心の流れが、まだ見えていないのです。人は、出来事そのものに反応しているように見えます。しかし、実際にはそうではありません。

人は、出来事をどう受け取ったかに反応しています。その出来事に、どんな意味を与えたかに反応しています。その意味づけによって感情が生まれ、感情によって行動が生まれ、行動によって関係が変わっていきます。

上司の一言、部下の沈黙、顧客の表情、会議での反応、数字の変化、評価、失敗、期待、違和感。それらは、ただの刺激です。

けれど、その刺激はすぐに、自分なりの解釈を通ります。これは認められたのか、否定されたのか、期待されているのか、責められているのか、可能性なのか、危険なのか、任せてよいのか、守らなければならないのか。

その解釈が、感情を生みます。安心、不安、怒り、焦り、喜び、悲しみ、違和感、恐れ。

そして、その感情が行動を動かします。話す、黙る、近づく、避ける、任せる、抱え込む、挑戦する、止まる、責める、守る、逃げる。

この流れが見えないまま、行動だけを変えようとしても、人はなかなか変われません。