「遅れてごめん、のどが渇いただろ? よかったら、これ飲んで」
差し出されたのは紙コップ、のどがカラカラだったので、思わず一気に飲み干してしまった。
まだ春先だったので、冷たくないのも気にならなかった。お腹が空いていたのに、彼とたわいもない話をするうちに、あたしの記憶はなくなった。
目が覚めたのは、古びた木造住宅の四畳半ほどの小部屋だった。
猛烈な頭の痛みと吐き気。やっと正気に戻って部屋を見回すと、あたしのほかに二人の若い女性がいた。二人とも後ろ手に縛られている。
あたしはまだ眠っていたから無事なのか。どちらにせよ騙されたのだ。ここはあたしが来たかった場所ではない。
徐々に鮮明になってくる頭で、やっと自分が捕まったのだと理解した。
築五十年近いと想像する、とてもボロい家、とにかくここから逃げ出さなくては。
尿意を催したので、トイレに行こうと思った。それに家の中が、どうなっているのかも、見たかった。音を立てないように、そうっと立ち上がる。
引き戸を開けたところで、男に見つかった。
色の黒い大柄な男、このとき初めて彼の全身を見た。
「なんだ、お目覚めかい?」
彼の目は笑っていなかった。
▶この話の続きを読む
マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…
▶『泥の中で咲け』連載を最初から読む
担任の女教師から言われた差別的なひと言。そして、いじめ。僕は高校を2か月でやめた
▶その他の衝撃的な展開のある記事はこちら
いつの間にか異性に対する感情になっていた彼から「今月、あと二十万あれば、僕ノルマクリアなんです」とお金を無心され…。
ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp