「過去にそんな悲しい歴史があったのね。でもどうして知っているの? 口から出まかせ。それとも三文小説家のストーリーじゃないの?」
「おおー、きれいなお顔に似合わず手厳しいですね。私たちの星は隕石や微惑星の衝突がわずかだったのです。運が良かったのかな」
姫子は自分たちの知らない何万年も前の話を聞かされても、納得がいきません。目の前の現実を問いただそうとしました。
「あなたの宇宙船は見えないの? 本当はここにいなくて、声だけなんじゃないの?」
「アーサー・クラークの第三法則を知っていますか?」
姫子はSF小説ファンだったから即座に答えました。
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」
「そう、姫子さんよくご存じですね。話が早いです。私たちの宇宙船が人里離れた山頂に、透明な宇宙船で音もなく降りて乗組員も透明だから、地球人に気づかれず調査を行えるのです」
姫子はエイリアンに思いがけない提案をしました。
「あなたは透明だけど、私たちのことは見えているのでしょう?」
「はい、美しい衣装は日本の伝統的な和服の振袖というんでしょう。直接見られて感激しています。おっとそちらの方も素敵ですよ」
気配りを忘れないエイリアンと思ったが、姫子は強い口調でした。
「それでは、一方的な不平等条約よ。関税自主権や領事裁判権は渡さないわ。まずは不平等解消のために、あなたも姿を見せなさい」
姫子は授業で習った用語を並べ立てた。
「すみません。条約も結んでいないし、関税も裁判権もチンプンカンプンです。なんせ私はエイリアンなので。しかし姿を見せることは前向きに検討します」
姫子の命令口調の鋭い声に相手はひるんだのか、返答までに時間がかかりました。
しばらくしてその質問に答えることなくエイリアンは祠の影のこんもりとした林から姿を現しました。身長190cmくらいでラメ入りの灰色のつなぎのような服を着ており、まるで自動車の整備士のようでした。髪の毛は黒く細おもての顔は男か女かわかりませんが地球に暮らす人々と、ほとんど変わらない印象でした。
一番特徴的なのは、サングラスのような黒いレンズの眼鏡の片方にレンズとも何かの装置ともわからない器具が取り付けてあることで、
淑子や姫子に威圧感を感じさせました。
しかし、眼鏡を手で持ち上げて、素顔を見せてくれました。
興奮ぎみに姫子は尋ねました。
「調査って、何の調査? それにどうして私の名前を知っているの?」
「地球では温暖化って呼ばれている現象です。温暖化防止に失敗した歴史を調査に来ました。名前? 第三法則の魔法ですよ。ハハハ」
「失敗したの?」
淑子も口を挟みます。
「失敗ってひどいわね。対策しているのに」と姫子。
「その件は忘れてくださいっていうか、忘れてもらいます」
宇宙人が何を言っているかわからない状態でしたが、淑子はUFOで町おこしをしている場所が、この近くにあることを思い出しました。
「千貫森(せんがんもり)、千貫森じゃないの? UFOの基地は」
「昔、円盤型の船の時代にあの山にビバークしましたが、そのときは装置の故障があったみたいで。今は船も大型化しているので、山頂が広い女神山を利用しています」
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