【前回記事を読む】体中に激痛が走り、意識が薄れていく。少女の体を蝕むのは、地球を“死の星”に変えるウイルスで――
第一章 エメラルドグリーンの国
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「大丈夫? しっかりして。これを飲みなさい」
看護師は、ルリエの口に素早く緑色のカプセルを含ませる。体中がひやっとして、痛みが和らいでいく。五分もすると、身をよじるほどの激痛がウソのように引いてしまった。看護師は、タオルで額の汗を拭いてくれた。
「ありがとう。お陰で楽になったわ」
ルリエは、看護師の方を向いて礼を言った。
「気持ちはわかるけど、焦ってはいけないわ。デスネヒトガスを吸ったせいなのよ。大量に吸ったのでなければ、安静にして中和カプセルを飲んでいれば、毒が少しずつ抜けていくけど、無理して体を動かそうとすると、血液中のデスネヒト毒が心臓を圧迫して、死に至ることもあるのよ」
「わかったわ。わたしが悪かった」
看護師の目を見ていると、自分をかつぐためのゲームではないことがよくわかった。
「それじゃあ、ジュースを飲んでしまいなさい。栄養をつけないと元気が出ないわ」
ルリエは黙ってうなずくと、緑色のジュースを飲みほした。
「いいこと、これは、わたしとあなただけの大切な話だから、絶対誰にも話さないって約束して。ぺセロ先生にも言ってはだめ」
看護師は、真剣な眼差しでルリエを見つめる。ルリエは、また黙ってうなずいた。
「さっき、院長先生とぺセロ先生が話しているのを立ち聞きしてしまったの。あなたの検査結果は、一週間以内に出るそうよ。そうしたら、すぐに国家保安警察に引き渡すって言ってたわ。たとえ、病気の子どもでも、マヤタ人の疑いがかかっている以上、見逃すわけにはいかないって、メーベル長官から命令があったそうよ。
メーベルは氷のように冷酷な男なの。もし、命令に逆らったら自分たちまで反逆者として逮捕されるって、院長先生が青ざめていたわ。でも、わたしはあなたを保安警察なんかに引き渡したくない。あなたがいくら日本人だと言い張っても、確かな証拠がない限り、保安警察はマヤタ人として収容所送りにすることは確実だもの。
それにマヤタでデスネヒトが大発生したのは、今から九年も前のことで、あなたがまだ小学校入学以前の話よね。仮にあなたがマヤタ人であったとしても、そんな罪もない人たちまで逮捕するのは間違っているわ」