【前回記事を読む】地下たまり場でいつも現金入り封筒を渡してくる男…金額の多さに違和感を覚えた頃、冊子を渡された。「爆弾の製造方法」だった。

風の部 霧は、アンダンテで流れ行く

第三章

ある日、麻雀が一段落し、それぞれ帰宅する者、何処かへ飲みに行く者たちに、いつものように茶封筒に入った札束を配っていたリーダー格のMが、「明日の朝、朝刊見ろよ!」と声をかけてきた。

ひろしは酔っ払っていて、「何かの冗談かな」と思っていた。

翌朝、相変わらず二日酔いで昼近くまで寝ていた。

前夜のMの言葉を思い出し、台所で水道の蛇口から水を飲んで、アパートの新聞受けから新聞を取ってきた。一面に大きく、バスの転落事故の記事が載っていた。

「えっ! まさか……ウソだろう」

一気に酔いが醒めるのがわかった。

スキー客を乗せた帰りの深夜バスが崖から転落し、乗客全員死亡。

杏子もこれに乗っていただろうかと、アパートに残していったスキー旅行のパンフレットを慌てて探し、アパートの赤電話から旅行社に連絡した。

何度も電話をかけるが、話し中でなかなかつながらず、何度目かでやっとつながった。

「なんと申し上げればよろしいか……その方のお名前は乗客名簿には記載されていますが……。まだ確認は取れていません。当社にお越しいただければ、現地へ案内させていただきます。失礼ですが、ご家族の方でしょうか?」

ひろしは電話口の担当者の声を聞き終わる前に電話を切った。

新聞の一面では他にも、東京のM社本社ビルをはじめ3件の爆破事件があり多くの死傷者が出ていたことが報じられていた。