【前回の記事を読む】警察官が近づくと、川辺のホームレスたちは一斉に姿を消した…警察は、ビニールシートで覆われた小屋の中を確認するように1軒ずつ声を掛けた。

第2章 陰と陽

2 ホームレスたちとの出会い

結城のことを最初は皆、無視していたが、頻繁にやって来る結城に根負けしたのかいらいらしたのか、うっせえな!とか生きてるよ!などと徐々に反応する者が出てきた。

「最初、声を掛けられた時ぁ、わしゃ、お迎えが来たのかと思ったわい」

「俺はこの前、垂れ幕を開けたと思ったら、目の前にしゃがんでやがってびびったわ」

などと口々に言い、変わったお巡りだと散々結城のことを貶しながらなぜか皆、楽しそうなのである。

しかし、いつも助け合いながら生活している彼らが今日はいつもと様子が違う。七十くらいの白髪頭の男と四十半ばくらいの坊主頭の男が睨み合い、それを他の三人ほどがおろおろしながら見ている。

白髪頭の男、コーさんが興奮して怒鳴る。

「わしの空き缶を盗みおって!」

「あれは俺が今朝集めてきたんだろうが!」

四十半ばの男、ワタさんが負けずに言い返す。どうやら空き缶を盗った盗らないで揉めているようだが、いつの間に来たのかコーさんの小屋の前で結城がしゃがみ込み、じっと地面を見ている。それに気がついたワタさんはひえっとものの怪でも見たような悲鳴を上げ、コーさんも薄気味悪さを押し隠しながら、

「な、何やっとるんじゃ。わしの家の前で……」

と、文句を言うが少々逃げ腰気味である。結城はしゃがんだままそこにいる五人の足元をじっと見ていたがはっきり言い切る。

「犯人はその方ではありません。犯人はここにはいないのであります」

はあ?と全員が声を上げる。結城は帽子の陰から皆の顔を眺めまわして尋ねる。

「最近、何か変わったことはありませんでしたか?」

結城の問いにホームレスたちははて、と考え込んだが、コーさんがああ、と何か思い出す。

「そういや、外に出していた皿が割れとったって言ってなかったか? タマさん」

急に話を振られて、タマさんと呼ばれた年齢不詳の小男はぽけーっとしながら、

「ああ、そういや何回かそんなことがあったなや。おら、カラスの悪戯かと思ってたんだが……」

尻を掻きながらそうタマさんは言う。それを皮切りに不審なことが続々と出てきた。