「そう。お父さんが、車で急いで行ってくれたから、手当てが間に合って、本当にうれしかったわ」と、優子はついこの間の事のように、うれしそうに微笑んだ。

「一週間ほど、うちで面倒をみて、優子ちゃんは、ポッポちゃん、ポッポちゃんって、エサをあげたり、可愛がっていたわね」

「元気になって、空へ飛ばしてやった時も、優子が泣いて困ったよ」

「あれは、うれしくて泣いたのよ」と、優子はまた微笑んだ。

達雄は、胸に迫るものがあり泣きそうになったが、娘に言うべき事を言わなければと思い、優しく娘を見て言った。

「優子。幸せになるんだぞ」 
「私、幸せだわ」
「そうじゃなくて、入江君との事だ」
「……私達、まだそんな関係じゃないわ」

優子は戸惑って答えた。入江圭一郎とは昨年の十月に出会った。友人の結婚披露宴で席が隣りになり、話しかけられた。入江は大学の理学部数学科で助手をしていて、聞くと、優子より一つ年上だった。誘われるままに、数回デートをしたが、父の病気の事もあり、最近、優子はあまり気乗りしていなかった。

 

▶この話の続きを読む
お父さんは、お母さんの初恋の人だった

👉『追憶の光』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】2人も産んだ女の体。本当は見せたくないのに…仰向けになったところで、脇を舐められ、「いや?」と聞かれ…

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp