「そう。お父さんが、車で急いで行ってくれたから、手当てが間に合って、本当にうれしかったわ」と、優子はついこの間の事のように、うれしそうに微笑んだ。
「一週間ほど、うちで面倒をみて、優子ちゃんは、ポッポちゃん、ポッポちゃんって、エサをあげたり、可愛がっていたわね」
「元気になって、空へ飛ばしてやった時も、優子が泣いて困ったよ」
「あれは、うれしくて泣いたのよ」と、優子はまた微笑んだ。
達雄は、胸に迫るものがあり泣きそうになったが、娘に言うべき事を言わなければと思い、優しく娘を見て言った。
「優子。幸せになるんだぞ」
「私、幸せだわ」
「そうじゃなくて、入江君との事だ」
「……私達、まだそんな関係じゃないわ」
優子は戸惑って答えた。入江圭一郎とは昨年の十月に出会った。友人の結婚披露宴で席が隣りになり、話しかけられた。入江は大学の理学部数学科で助手をしていて、聞くと、優子より一つ年上だった。誘われるままに、数回デートをしたが、父の病気の事もあり、最近、優子はあまり気乗りしていなかった。
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お父さんは、お母さんの初恋の人だった
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