千恵は、「美味しくない、美味しくない」と言っては、毎日何本も飲用していた。そのうち、娘と私も毎日一本程度を飲用することにした。同じ物を飲用することで、千恵の気持ちを少しでもなだめたかった。私は、
「彩ちゃん、この人参ジュース、美味しいよね?」
「うん、以前のものよりずっと飲みやすいし、口当たりもいいし、何より、健康にとっても良さそう」
「ママ、味覚少しおかしいんじゃない?」
娘にはまだ千恵の病気について伝えていなかったが、もしかしたら病気のことは気づいていたのかもしれない。その場の空気を察し、気遣いしてくれた。
人参ジュースを買うために高速道路を使い、千葉方面に向かっていた。降りる出口は何度か教えてもらっていたが、いつも降りる際に不安になっていた。
「この出口で降りるんだっけ?」
と独り言を呟いた。そう思っていた途端、降りなければならない出口を通過してしまい、一つ先の出口まで行ってしまった。高速の出口を出てから左へ曲がるがいつもと景色が違う。その時、初めて間違いに気づいた。やっぱり、一つ前の出口で出なくてはいけなかった。
千恵から何度か出口の場所を聞いていたので、今更電話で確認するわけにはいかない。我が家の車にはナビは付いていない。二時間程度彷徨(さまよ)い、方向だけを頼りにやっとの思いで目的地に到着した。品物を買い、携帯メールで帰るコールをすると、
「道間違えてそんなに遅いんでしょ!」
やはり見透かされていた。自宅に戻ると、
「何度言っても分からないんだから、ナビ付けた方がいいんじゃない?」
千恵は、私が頑固で強情な性格だと知っていながら、わざとそういう言い方をした。
私は聞き流しながら、
「そうだね」
と相槌を打ったが、未だにナビは購入していない。
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